良導絡の問題点

良導絡の説明は「うそ」

病気といえば自律神経が原因。
そんな説明が氾濫しています。
経絡の正体だって自律神経だ、という説明が、もう半世紀以上も語られています(良導絡)。
しかし、実際に測ってみると、そんな説明は破綻していることに気がつきます。

良導絡の季節変化

自律神経と免疫の研究で有名な安保徹教授(新潟大学)は、リンパ球・顆粒球の割合から、高温多湿の夏季は副交感神経優位、低温乾燥の冬季は交感神経優位になると説明しています(1996年)。

ところが、良導絡の基礎研究の中で、交感神経の緊張を示すといわれた良導絡の測定値は、夏に増大し(交感神経優位を示す)、冬は減少する(副交感神経優位を示す)ことがわかっています。
これでは、まるで逆なのです。

同様に、良導絡の測定値は、若年者で大きく、高齢者では小さいことがわかっていますが、これも、加齢とともに交感神経が優位になるという一般的な見解からみれば矛盾しています。

良導絡が交感神経緊張を測っている、というのは、明らかに誤認です。

安保教授の最近の研究を待つまでも無く、1970年代には、すでに生理学会から「立毛筋が緊張している箇所(の反対側)で、高い値を示さないので、良導絡は交感神経の緊張を示しているとはいえない」という指摘を受けています。

良導絡は何を測る?

ところが、今日に至るまで、日本良導絡自律神経学会は、良導絡が交感神経の緊張を測定している、という説明を続けています。
『良導絡 自律神経調整療法<基礎編>』(日本良導絡自律神経学界 学術部編 第6刷 2008年4月) の冒頭でも、良導絡は交感神経の緊張を測定していると説明されています。

その背景として、病気は自律神経が原因という、自律神経信仰があると思います。
ストレスで自律神経が乱れている、自律神経が病気の原因、という理屈は、説明も理解も容易なので、乱用されています。

この理屈にのって、鍼灸の価値をアピールするために、交感神経の緊張を測っていると説明するのは好都合です。

しかし、こうした説明の矛盾が、良導絡の信頼を損なっているのも事実です。
何を測っているのかわからないというご意見を、研究者だけでなく、かつて良導絡を試してみた、という医師・鍼灸師jから伺うことがあります。

統計的な試み

測定内容の矛盾を補うためか、うつ症状では肝経(F2)の実(興奮)が何%だった、といった統計を用いた検証もなされています。
データ収集のために大変な努力がなされているのですが、交感神経の緊張を測っている、という説明が矛盾したままでは、こうした努力も評価が得られないのではないか?と思います。
何を測っているのかもわからないまま、統計結果だけを示されても、治療法の決定に役立てることは難しいと思うからです。
学術的には意味があると思いますが、実用的な情報か?と問われると疑問符がつきます。

解決策として

そこで、新たな方法として、皮膚を単なる物体とみなし、物としての性質=物性が変化していないかを、詳しく調べる方法を用いています。

一般的に、電流量には(1)物性=素材が電気を通しやすいか?と、(2)形状=素材の断面積や長さの、二つが関わります。
(1)の物性だけが関わる時定数という数値も測り、電流量の変化と比較すれば、皮膚の状態がもっと詳しくわかるのです。

このようにして詳しく測ると、皮膚の電気的な特性は、夏に増大し冬に減少する要素と、季節によらず一定な要素と、交感神経の緊張との関連が強い要素の、三つに分けることができます。

また、それぞれが、真皮層の間質液の量と、真皮層の間質液の質(イオン濃度)と、表皮層の水分量(皮脂分泌)に関わるだろうことも、推測できています。

良導絡の情報は、これらの情報が重なり合ったものになってしまっているようです。
実際に、良導絡は交感神経の緊張(皮脂分泌による表皮の変化)だけでなく、真皮層の間質液の状態とも関わる測定値になっているだろうことを、統計的に確かめています(詳しくは、論文「良導絡の測定内容に関する、AMIによる考察」をご覧ください)。

経絡の正体

また、実際の症状と見比べてみると、経絡として知られる現象は、交感神経の緊張だけではなく、血液の循環や、間質液の状態も含めた、複合的なものだと考えられます。

生体内に異常=間質液の異常があれば、自律神経(の求心性繊維)が感知し、交感神経(遠心性繊維)が血管に働きかけ、改善しようとします。

こうした制御が、何らかの都合で機能しなくなったときに、経絡現象と呼ばれるような異常が発生するようです。

制御に関わる情報を全て集めたほうが、状態をよりよく把握できるでしょう。

私たちは、右図の間質液の異常と自律神経の異常の二つについて情報を得ることで、(良導絡に比べ、より詳しい分析を可能にしています。

良導絡の再評価のために

冒頭に、『良導絡の説明は「うそ」』と書きましたが、『良導絡は「うそ」』というわけではありません。

説明が間違っていることと、現象自体が存在することは、別問題なのです。
以前、経絡の説明で、「カミナリさまなんかいないから、カミナリなんて有り得ない」という人はいないだろう、と書きました。
それと同様に、良導絡の説明が間違っているからといって、良導絡の測定自体が間違っているとは言い切れません。

実際、多くの良導絡ユーザーが、「(説明は間違っているの)だけど、腎虚の人で腎経(F3)が弱くなってたりするんだよ」といった話をします。説明は間違っていると思うが、測定結果が症状に合うことがあるから、否定し切れないのです。

上に挙げた統計的な試みを行っているグループも、この点については同様だと思います。
症状と全くそぐわないのなら、こだわって研究することもないでしょう。
しかし、良導絡のデータが複数の要因を持つのなら、それぞれの要因ごとに統計を取らなければ、正確な分析結果は得られないでしょう。複数の要素から良導絡について再考する、多変量解析が必要なのです。

60年前に、経絡の測定を、具体的な手段とともに提案したのは、間違いなく良導絡です。
簡単な交流電流計だけしかなかった時代に、人体を測り、紙一枚で分析できるようにした、画期的なアイディアでした。
(中谷義雄先生と、その周辺にいたスタッフたちの、類まれな才能と情熱、努力の成果だと思って尊敬しています。)
しかし、60年前から、測定方法も解釈も変えていないのは、大きな問題です。
(1980年代にコンピュータ化しましたが、一番大切な測定方法や分析方法は、60年前のまま改善されていません。)

私たちが用いている、真皮間質液測定装置と、経絡虚実判定支援ソフトウェアは、つい最近になって特許を取得した、新しい測定機器です(*)。
こうした機器を用いて再検討すれば、良導絡が何を測っていたか、生理学的な意味が何かがわかるでしょう。
こうした研究が進めば、経絡の虚実、東洋医学の経験則を、現代医学に取り込むことも、可能になると考えています。







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