東洋医学と経絡

臓腑と経絡 個別な二つの分類法

臓腑と経絡は、それぞれ個別に体系化が始まった、と考えられています。

目の症状を肝に分類するなどの、各種の症状・機能を関連づけた臓腑=機能による分類は、経絡とは個別に体系化が始まりました。五行説が用いられる以前から、肝・心・脾・肺・腎などに分類されていたようです。
これに対して、経絡は治療法で分類されています。ここを刺激するとどんな症状が改善する、というように、経絡=治療法による分類です。

両者には、成り立ちから明確な違いがありました。


分類法の統合 経絡による分類の統一

時系列では、湯液の原典「傷寒論」よりも前に、鍼灸の原典「黄帝内経」が編纂されました。鍼灸治療が湯液より先に体系化されたことになります。

このため、人体観はまず鍼灸治療による分類法で統一され、経絡=治療法による分類を基本にして、臓腑=機能が再分類されました。

例えば、心は循環器と大脳(思考能力)の二つの機能を内包すると考えられていますが、機能だけに注目すると理解しがたい分類です。

しかし、循環器と大脳(思考能力)の失調が、どちらも鍼灸治療では腕の尺側で治療効果を得られた、という経験則から分類したと考えると、理解しやすくなります。心と小腸の陰陽関係も、同様な説明ができます。

五臓六腑に脳、骨、女子胞などが含まれないのも、もともとの経絡の分類=十一経脈(馬王堆医経)に、これらの腑が含まれないためだと考えられます。


治療法による分類 湯液・鍼灸に共通な五臓六腑の概念

上記のように、十一経脈に基づき、臓腑は五臓六腑に再分類されました。経絡による五臓六腑の分類は、湯液・鍼灸に関わらず、現代まで中国医学の基本となっています(右下図)。

五臓六腑だけでなく、方証(方剤の適応による体質の分類)も、 「この治療法が有効な症状はなにか?」という分類法です。

これに対して、脉診、舌診、腹診など各種の診察は、「この症状に有効な治療法はなにか?」という分類法です(下図)。



湯液や鍼灸などの「限られた治療法」しかなかった時代には、診断とは病名決定ではなく、「治療法の選択=治療法による分類」だったと考えられます。治療法自体が「証」、治療法に合わせこむ分類が「証立て」、分類の方法論が各種診察法や弁証法、ともいえます。

弁証法を熱心に学んでも、証の根本となる五臓六腑の概念=経絡による分類を理解していないと、全体像が明確になりません。

証の理解には、根底にある五臓六腑=経絡の理解が不可欠です。



経絡の診察 現実と問題点

直接的に経絡の虚実を推測できれば、五臓六腑=経絡による機能分類を理解しやすいだけでなく、脉診や腹診、舌診など他の診察法と併用することで、より精度の高い証判定に役立てられるはずです。

しかし、実際の臨床では時間に制限があるため、詳細な診察は困難です。

時間の制限のために、湯液を専門とされる先生方には、脉診や腹診などの限られた診察のみで証立てを行う先生も多いでしょう。

このままでは、経絡や五臓六腑について、なかなか理解が進みません。


井穴の測定 経絡の「虚実判定」を迅速化

上のように考えると、実際の問題は時間制限であることに気づきます。

全てを視診と触診で判断せず、事前に機器でスクリーニングを行えば、診察と判定がより早く、より正確に行えるので、経絡を用いた証の判定が現実的になります(検査結果に基づき診断(東洋医学でいえば証立て)することは、現代的な医療ではむしろ当然といえるでしょう)。

このためAMICAは、経絡の末端(井穴=指先のツボ)で真皮層の状態を測定し、経絡の虚実を推測・スクリーニングしています。


虚実の把握  基本的 だからこそ強力なツール

AMICAは、指先の経穴(井穴)の状態を微弱電流で測定し、経絡の虚実を推測・スクリーニングしています。

基本的な測定方法(矩形波応答)を用いて、真皮層の物性を測定しています(具体的には、3V、500μsのパルスで、間質液の量や質を推測しています)。

測定結果は、寒熱(間質液量の過不足から推測)、虚実(間質液のイオンの過不足から推測)として表現されます。明快な生理現象を、寒熱、虚実の概念と対応させ、証の推測=スクリーニングに用いています。

全身についても、冷えや虚実、冷えのぼせなどの偏りを推測しています。

基本的だからこそ解かりやすく、再現性の高い情報を提供しています。


もちろん鍼灸治療にも

測定結果を参考にした迅速な診察は、もちろん鍼灸分野でも活用できます。
虚実の推測から、冷えやコリなど、予想される反応の種類や、反応が予測されるツボを提示し、視診、触診をサポートしています。
データとともに経絡の虚実を説明し、画面を示しながら視診、触診を進めれば、患者さんの信頼獲得にも大いに役立つでしょう。
胸腹部のツボ(募穴)、背部のツボ(兪穴)、末梢のツボ、の三つの組合せを用いて、簡単に使える円皮鍼(ペタッと貼るだけの鍼)や温灸(貼って火をつけるだけの灸)で行える、基本的な治療も提案しています。
鍼灸治療をこれから学ぼう、始めようという方にも、お勧めしています。



このページに掲載している内容は、2008年2月17日(日)第25回 日本東方医学会 学術大会で配布した資料のものです。
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