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経絡
このサイトの運営者が、経絡をどのように解釈しているか説明しています。
経絡は存在しない?
東洋医学の中でも、経絡は最も早い時期に経験則としてまとめられました。
経絡は当初、反応の現れるところ、治療効果の得られる皮膚領域の分類としてだけ、認識されていたようです。
その後、経絡にはさまざまな解釈が付け加えられ、今日では「気の流れ道」という説明が一般的です。
問題は、「気の流れ道」と説明できるような道筋は、解剖学的にも、生理学的にも、確認できないことです。
このため、経絡は非科学的だと判断され、鍼灸師の中にでさえ、経絡を頭から否定する人がいます。
経絡はカミナリと同じ?
説明が間違っていることと、現象が存在しないことは、全く別の問題です。
「カミナリは、カミナリさまが鳴らしていて、背中の太鼓でゴロゴロゴロ…」
この説明に対して、「カミナリさまなんて説明はウソだ、存在しない」という人はいるでしょうが、「カミナリさまなんかいないから、カミナリなんて現象もあり得ない」という人はいないでしょう。
しかし、経絡については、「気の通り道」が証明できないから、反応や治療効果などの現象もある筈がない、という飛躍した論理がまかり通っています。
故間中喜雄先生が、経絡を現象論として語るべきだ、と話されたのは、こうした風潮を疑問視したためだったのでしょう。
経絡を皮膚から解釈
実際の鍼灸の臨床現場では、皮膚の状態を診断(経絡の虚実判定)に役立てています。
もっとも分かりやすい例として、皮膚のくぼんだ箇所には温灸が適している、という経験則があります。
(『霊枢』:経脈篇に「陥下するときは則ち之に灸せよ」とあります。)
「気の流れ道」という説明に囚われず、皮膚の現象(状態)を観察すれば、現象としての経絡、ありのままの経絡を理解できるのではないか?
こうした考えから、私たちは真皮間質液測定装置を用い、経絡の虚実を推測してます。
皮膚からみた経絡
前項で示した皮膚のくぼみは、皮膚の構造から考えると、真皮層で起きていると考えられます。
角質を含む表皮は、くぼみを形作るほどの厚さがありません。
真皮層は、表皮の10倍ほどの厚みをもち、多量の細胞外液=間質液を有しています。
また、鍼治療のひとつである円皮鍼は、真皮層の深さまで刺すと効果があることが知られています。
さらに、灸の燃焼で出る遠赤外線は、水分の多い真皮層でほとんどが吸収されます。
これらの経験則や知識から、経絡と呼ばれる反応や治療の経験則は、真皮層との関わりが強いと考え、電気的な測定を行っています。
そうした中で、真皮層の水分が不足している=皮膚表面の代謝が不足傾向だと、寒の訴えが多くなることなどが、分かってきました。(明治鍼灸大学
東洋医学基礎教室の実験による。)
経絡の測定のページや、虚実とは?のページでも説明しているとおり、真皮層の水分量や電解質の過不足と、(経絡の)虚実として説明される症状には、強い関わりがあるようです。
経絡と鍼灸
鍼灸の治療効果は、鍼の機械的な刺激と、灸の温熱刺激の両方を感じ取る、ポリモーダル受容器によって引き起こされる、という考えが主流です。
しかし、上に挙げたように、経絡の状態を真皮層の間質液から推測できるなら、鍼灸の治療効果も間質液を通じて説明できるかも知れません。
つまり、(1)鍼灸の刺激 > (2)ポリモーダル受容器、という直接的なメカニズムではなく、(1)鍼灸の刺激>(2)間質液の量・質の変化>(3)ポリモーダル受容器などの感覚受容器、という図式が考えられると思います。
この考えのほうが、上に挙げたような経絡の特性、鍼灸治療の特性を説明しやすいと思います。
経絡のメカニズムは?(1)
問題となるのは、上記の(真皮層の)間質液が、どのような規則性で変化しているか=どうして経絡と呼ばれる道筋ができるのか?という点です。
「経絡の中を気が流れている」という表現から、間質液の流れる道筋が、あたかも川のように、物質的につながっている、と直感的に考える方も多いでしょう。
しかし、間質液の量や質は、自律神経(と内臓求心性線維)で調整されているはずなので、同じ末梢神経の枝に沿って同様の変化が現れる=信号でのつながりが経絡である、とも考えられます。
さらに、自律神経の中枢は視床下部にあり、そこでさまざまな部位の情報が絡み合う(感情やストレスの影響も受けます)ので、身体のさまざまな部位の情報が絡み合った結果、全く関係がないと思われるような箇所の間質液が、同様に変化する=信号の混線でつながっている反応点が経絡、という可能性もあります。
経絡のメカニズムは?(2)
さらに考えるべき点があります。
受精卵が人間の体へと発生していく段階では、骨や肉ができた後に末梢の神経線維が(自律神経の線維とともに)伸びてくるのですが、では、末梢の神経が伸びてくる前は、何が間質液の管理をしているのでしょうか?
間質液は当初、あたかも浸透圧だけで自らをコントロールしているかのような印象も受けますが、その原始的なコントロールは、自律神経が伸びてきたあと消えてしまうのでしょうか?それとも、ひっそりと存続しているのでしょうか?
私たちは、eメールが発達した今日も、それ以前のFaxや、さらにそれ以前の郵便を、通信手段として用いています。
これらの伝達方法を、お互いの欠点を補い合うようにして、全体として使い分けています。
身体の中でも「旧いシステム」が、神経や血管などの新しいシステムを補っているのかもしれません。
経絡のメカニズムは?(3)
いろいろと考察してみましたが、経絡に対するこれらの疑問に対して、解答は得られていません。
私たち(amicaの開発者やユーザー)が得ている知識は、指先にあるツボ(井穴)で測った間質液のようすから、それぞれの指先と繋がっているとされる経絡上の、反応や症状のようすがよく推測できる、という現象だけです。
客観的な測定値として、経絡(の虚実)を理解する手がかりとして、間質液の状態が有効だろうということは分かっていますが、間質液の変化を起こすメカニズムまでは分かっていません。
経絡 現状と課題
現代医学に限った視点で見ても、自律神経や内臓求心性線維が、どのようにして間質液(の量や質)を調整しているかは、実は良く分かっていないようです。
有名なトリガーポイントについて、その研究の初期に、麻酔注射による血管拡張ではなく、硬結部への生理食塩水の注射だけでも、痛みなどの症状が改善されたという報告があります。
間質液の変化が、硬結や痛みと強く関わっていることに間違いはないのですが、(上の事例から)血管の働きが不可欠というわけではないとも考えられます。
実は、浸透圧によって、毛細血管の動脈部分から水分が間質液に出て、静脈部分で再吸収されるという水分代謝の説明も、正確には『スターリングの仮説』と呼ばれるもので、証明されたものではありません。
間質液の調節については、まだまだ検証が必要なようです。
経絡の活用
しかし、(井穴などの)特定部位の間質液の量や電気的な特性から、反応や症状を推測できる…出現パターンやその強弱を推測できるなら、経絡を客観的で具体的な現象論としてまとめられるはずです。
現象論としてまとめられれば、古来から蓄積され、伝承されていた知識…経絡と呼ばれる反応や症状の伝播経路の経験則を、効率よく活用できるのではないでしょうか?
経験則だとは分かっていても、その運用のための『虚実』の判断ができない…何種類もある『虚実』の概念を、どのように評価したらよいか分からない…評価するための定量的な指標がない…。
経絡を実際の臨床に役立てる上での最大の問題は、この『虚実』の解釈が不明瞭で、明確に数値化できない、という点ではないでしょうか?
私たちは、虚実の概念を、間質液の量の過不足、電解質の過不足、さらに緊張(こわばり)の三つに分けて説明し、経絡という経験則を臨床で活用できるように、提案しています。
(緊張(こわばり)については、緊張の治療のページをご覧ください。)
また、このように現象論をまとめられれば、間質液の代謝や調整が、どのような機序でなされているか、現代医学的な分野での研究の一助にもなると考えています。
間質液の調整は、上に挙げた推測の中の、どの働きでなされているのか? そのうちの一つなのか、複数なのか、全てなのか? 経絡が病的な状態に陥るのは、どの働きが重要なファクターなのか?
安易に肯定や否定をせず、決め付けの先入観も持たず、現象として経絡をを観察していくことが大事だと思っています。
経絡の解釈 補足
以前はこのページで、経絡のまとめとして、
『経絡は、間質液のチャンネルである。』
と書いていました。
しかし、上記の考察や実践的な治療も考えると、経絡は次のような広がりを持っていると思います。
『経絡は、間質液のチャンネルと、
間質液の調整を行う(神経などの)チャンネルの、全体をさす。』
というのも、実際の鍼灸治療では、直接的に経絡に治療を行うだけでなく、間接的に経絡に治療を行っていると思える方法が多いからです。
例えば、後脛骨動脈への刺激になると考えられる、太谿や照海などのツボがあります。
こうしたツボは、直接的に経絡(間質液)へ働きかけるというより、血管を刺激し血流を増やすことで、間接的に経絡へ働きかけている=間質液の量や質を改善している、と考えられます。(鍼灸治療のページを参照してください。)
経絡や鍼灸治療を間質液を介して説明すればし、説明の幅が広がり、経絡を包括的に理解できると思います。
(もちろん、緊張の緩和や麻痺の治療など、鍼灸治療の中には神経だけに直接働きかけていると考えるられる手法もあります。ここでは、あくまで『経絡(現象)とは?』という意味合いで、上のようにまとめてみました。)
注釈1
自律神経(遠心路)に対する求心性神経線維は、内臓求心性線維と呼ばれたり、自律神経求心路と呼ばれたり、書籍によって解釈が分かれています。
この文章は、鍼灸師の先生が多く読まれるでしょうから、東洋療法学校協会が編集した教科書に従い、内臓求心性線維と呼んでいます。しかし、この線維の働きについて、多くを語っている書籍は少なく、たいていは分類についてだけを語り、詳細は記述していません。
注釈2
経絡には、経絡と経脈、経絡と流注、経絡と経筋、経絡と臓腑といった、分離しづらい概念が多く存在します。
一般的に経絡と経脈が同一視されていますが、本来なら経絡は経脈を含んだ包括的な概念です。
経絡には、代表的な12本の経絡(正経)、枝分かれした経絡(経別)、例外的な経絡(奇経)など、各種の経絡があり、経絡と一言で書いてあっても、経絡に詳しい先生には、どの経絡かわからない、ということになるかもしれません。
このページにも、経絡ではなく経脈と記述すべき内容が多いのですが、一般に経絡≒経脈=皮膚の領域、それも正経十二経絡と考えられているので、経絡という記述で統一しています。
経絡と経脈の違い、本来の経絡の持つ概念については、改めて書きたいと思っていますが、経絡や経脈などの単語で検索していただければ、解説が見つかると思います。
参考文献
『解剖学アトラスV 神経』 文光堂
『人体の正常構造と機能 \神経系(2)』 日本医事新報社
『ラーセン 最新人体発生学 大2版』 西村書店
『フィッツジェラルド 人体発生学』 西村書店
『生理学』 医歯薬出版株式会社 東洋療法学校協会 編
(2008年7月9日 加筆修正)
経絡の虚実 測定と判定 鍼灸・漢方・東洋医学の「証判定」
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