緊張と鍼灸
緊張と鍼灸について説明しています。
緊張とは
AMICADは虚実の概念をいくつかに分類しています。
緊張は、実の一種類としてとらえ、皮脂分泌の過剰=皮膚分節(デルマトーム)が交感神経優位となっていることから推測しています。
緊張という言葉は、現代医学的には明確な定義がありません。(強いて言えば、筋トーヌスが近い概念だと思います。)
緊張がみられる部位では、普段から力が入りやすく、興奮すると震えやすいといった訴えが多いようです。
緊張のパターン(1)
右図は虚実1(緊張)が特徴的な測定データの典型例です。
実傾向が左半身に偏り、手(大腸経)と足(脾経)で緊張が同じ左側に現れています。
このように、緊張が見られる場合、左右どちらかに偏って出るパターンが多いようです。
右図の例では、身体の左側が緊張するため、身体全体が左側に傾き、左肩が下がり、左腰に痛みがある、といった症状がみられました。
このようなデータでは、緊張のため肩が上がる場合と、肩が下がる=肩を伸ばそうとして下げる場合の、二通りがあるようです。
緊張側の肩が下がっている場合、下がるだけでなく後ろにねじれている人も少なくありません。
緊張のパターン(2)
また、右図のように、手と足で緊張が反対に出る(たすき掛けになる)パターンも散見します。
このデータは長年肉体労働に携わり、右肩で荷物を担ぎ、左足で踏ん張る、という姿勢を続けてきた方のものです。
先の例とは異なり、身体全体が傾くことよりも、姿勢がねじれていることが多いようです。
緊張と鍼灸
緊張が強い場合、鍼灸の中でも、末梢(井穴やケイ穴など)への皮内鍼(円皮鍼)が効果的なようです。
末梢神経に沿って、交感神経の枝も伸びてきます。
この枝の末梢(の皮膚領域)に鍼で刺激すると、弱刺激でも効果的に緊張を緩和できるようです。
鍼灸のうち、早い時代にまとめられた灸(馬王堆文献)では背部兪穴を、後の時代にまとめられた鍼(霊枢・難経)では五要穴を多用しています。同じ鍼灸でも得意分野が異なり、鍼灸の中でも鍼は、四肢や抹消を用いた緊張や実の緩和が得意なようです。
(ここでご紹介している治療法は、松韻堂鍼灸院 滝上晴祥先生に臨床で追試験をしていただき、効果を検証していただいています。)
鍼灸分野で有名な良導絡は、「原穴で皮脂分泌の過剰(緊張)を測定し、皮脂分泌が過剰な経絡の四肢末梢を鍼で刺激した」と翻訳できるでしょう。
しかし、鍼灸の治療対象=経絡の虚実(特に虚)には、緊張以外にも、真皮間質液の量的・質的な過不足があるようです。鍼灸の全体像を捉え、鍼と灸を使い分けるためには、緊張以外の虚実の要素も活用するべきでしょう。
弱刺激による効果
最近では、セイリン株式会社からパイオネックスという、扱いやすく痛みも少ない円皮鍼が販売されているので、井穴や榮穴など末梢への円皮鍼も容易になりました。
緊張がある場合、 効果を得られるまでの時間に差があるようですが、円皮鍼、皮内鍼、毫鍼の刺入のいずれでも、同様に効果が得られるようです。
強刺激を行い、響きといわれる現象を起こすと、緊張を短時間に緩和させられるように思いますが、より安全に、誰にでも行いやすい方法として、円皮鍼を用いた末梢への刺激をお勧めしています。
鍼灸の臨床では、1時間ほどベッドで横になってもらうので、最初に末梢への円皮鍼を行い、時間のかかる温灸などを施す間に、緊張が解けるようにしています。
緊張を緩和させながら、温熱刺激などで虚症状も緩和させると心地よくなるらしく、熟睡する患者さんが多いようです。
■ 参考文献
『ヒトの交感神経活動とその病態』 第45回日本自律神経学会総会 特別講演 間野忠明
『AMIによる神経と経絡の研究』 宗教心理出版 本山 博
『無血刺絡の臨床』 三和書籍 長田 裕
『誰にでもできる経筋治療』 医道の日本社 篠原 昭二
『良導絡 自律神経調整療法』 日本鍼灸良導絡医学会 学術部編
篠原先生の経筋治療と、ここでお話しした緊張の治療は、完全に一致するものではないようです。
しかし、篠原先生のお話しが、大きなヒントになったので、参考図書としてご紹介しています。
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