私の鍼灸治療

使い分けています

参考までに、私の鍼灸治療の方法を書き出してみます。
測定器を用いて、経絡の虚実を測定していますが、治療方法はごく普通です。
現代医学的な解釈が明確な場合は、鍼通電も用いています。
煙が出ない電気温灸器を用いていますが、温灸の代わりなので特徴と言うほどでもありません。
虚実をていねいに把握し、優先順位をつけて治療すれば、特殊な治療法を用いなくても、効果は得られると思っています。

診断・治療の順番

四肢末梢で、経絡の虚実=皮膚の反応がみられれば、それに従った治療を行います。
しかし、経絡の虚実では説明が難しく、現代医学的な解釈がよく当てはまる症例では、神経や筋肉を目標にして治療しています。

経絡の虚実で特徴がみられる場合の治療は、おおむね次のとおりです。
緊張が見られる場合は、最初に四肢末端で浅刺し、弛めています。
また、肘や膝までのツボを用いて、四肢の硬結をとってから、腹部、背部を治療しています。
たいていはお腹から背中の順番で治療しています。
冷えのぼせが強く、頭部の鍼を用いたいような患者さんでは、うつ伏せにして後頚部の治療をしてから、前頭部の治療を施すために、背中からお腹の順番で治療します。

基本は0番鍼

私は、ほとんどの場合、1寸0番の鍼を用いています。
カナケンディスポ鍼(はり皿付)10本セットを、各患者さんごとに用います。
(頚部やでん部圧痛点など、折鍼が怖い部位では3番も用います。)
神経や筋肉を目標にする場合は、1寸6分3番の鍼を用いて、鍼通電も行っています。

補は横刺、瀉は直刺〜斜刺

補法の場合は、横刺で5mmほど入れ、温灸(温灸器)を施します。
瀉法の場合は、直刺〜斜刺で響きを得られるまで、5〜20mmほど入れます。
瀉法で0番鍼というと、物足りないと思う先生もいらっしゃるようですが、硬結が強く、響きが必要な場合ほど、細い鍼が良いと思っています。例えば、ぎっくり腰などの硬結(炎症部位ではない)には、細い鍼で穏やかに刺さないと、刺激が強すぎます。
ゆっくりと刺入し、できるだけ浅いところで止めるようにしています。
椎間関節に刺す場合や、でん部圧痛点に刺す場合など、大きく強い筋肉を貫通するような場合は、折鍼の恐れもありますし、鍼通電を行うこともあるので、3番鍼を用いていますが、雀啄などで響かせることはあまりしていません。

皮内鍼

カナケン社製の平軸皮内鍼(5mm)を用いています。
初診の患者さんや、敏感な患者さんには、セイリン社製のパイオネックス(0.9mm)を用います。
おもに、実痛や硬結が強い場所に用います。
皮内鍼を発案した赤羽幸兵衛先生の使用法を読む限り、赤羽先生は急性や痛みの強い実症状に皮内鍼を多く用いたと感じているからです(参考:『知熱感度測定による鍼灸治療法』赤羽幸兵衛著 医道の日本社、『医道の日本』2004年3月号・4月号 特集「臨床と皮内鍼」)。赤羽先生ご自身も、皮内鍼は弱い刺激なので補法、と書いていらっしゃいますが、症例を見る限りは実症状に多用しています。

鍼通電

頚椎と腰椎の椎間関節部に多用しています。
経絡の虚実を測定し、特徴が見られても、症状と一致しない場合があります。
例えば、五十肩や椎間関節性の腰痛などで、異常個所が明確だけれども、皮膚の反応としては現れていないような場合があります(運動器の障害に多いようです)。
このような場合は、四肢末梢に弱刺激を行うだけでなく、体性神経に沿って刺激を与えた上で、関連痛と思える痛みに皮内鍼を用いたほうが効果的だと考えています。
ただし、鍼に電気を流すことを怖がる患者さんもいらっしゃるので、ゴム電極を用いることがあります。ゴム電極を用いる場合は、高い電圧が必要なので、十分な電圧を出せるオームパルサーLFP-4000A(全医療器製)を用いています。



温灸器の活用

温灸器としてソフコン(全医療器製)を使用しています(右図)。

温熱が必要な際に、温灸器を用います。
おもに補法で用い、虚傾向の場合は最初に温灸器で心地よく温めてようすをみます(灸頭鍼は煙が多く、火災報知器が作動しそうなので、使用していません)。
昭和の灸名人・沢田健先生が、「冷えの治療には、手三里にうんとたくさん灸をすえなければいけない」と書いていましたが、電気温灸器は自動で熱刺激を繰り返すので、こうした治療にはとても重宝しています。
温熱刺激としては、他にも遠赤外線ランプのレッドサン(東芝医療用品製)を使用しています。こちらは、足の裏を温めたり、腰を温めたり、治療補助に用いています。


透熱灸

虚傾向でも、心地よく温めるだけでは効果を得づらい場合、透熱灸を用います。
また、特効穴として用いられる身柱、命門や、中カンのようなツボには、透熱灸を多く用います。ただし、火傷の残らないように、点灸紙(右図)を用いています。
患者さんは熱がりますが、ほんの2〜3秒しか熱さが続かないこと、いざとなったら摘み取ってあげること、火傷になっても軽いものだと伝えると、たいていの人が納得して治療を受けてくれます。
患者さんが不快に思うのでお灸はやらない、という先生が多いようですが、きちんと説明すれば患者さんは納得してくれると感じています。


補足

以前は、皮膚への刺激を優先し、筋まで刺して響きを得ることは極力避けようと考えていました。しかし、0番鍼を使うようになってからは、筋まで刺したところで、痛みも副作用もほとんど無いと考えるようになりました。
実している部分に深く刺し、響きを得ると効き目がシャープなため、初診の患者さんに納得してもらいやすい、というメリットもあります。
指先の測定で、実傾向が明確にみられる経絡で、その背部兪穴に硬結がある場合、多くは0番鍼を静かに刺入していくだけで明確な響きを得られます。このため、背部兪穴へはよく筋まで刺して置鍼しています(背部兪穴には0番鍼を用いますが、椎間関節部には1寸6分3番を用いています)。
膝や肘の関節が痛む(炎症がある場合など)は、深く刺さずに皮内鍼を用いています。
また、同じく指先の測定で、虚傾向が明確にみられる経絡では、多くはその背部兪穴の知熱感度が低下しています。例えば、井穴で右側だけが虚している場合、右側の背部兪穴では透熱灸を熱がらず、反対側では熱がる規則性があります。こうした左右差を是正して、多くの例でよい治療効果を得ています。
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